4月だけじゃなく5月も注意! 新学期、新入学の子どもの「ストレス」、軽減させる3つのポイントは
写真はイメージ(iStock)
新入学、新学期を迎えた子どもたちは、想像以上にストレスや不安を感じています。そんな子どもたちのために、どんなサポートをすればよいのでしょうか。子育て情報誌「AERA with Kids2024年春号」(朝日新聞出版)からお届けします。
緊張、不安を抱えて 一生懸命な子どもたち
新しい学年や学校生活に期待がふくらむ新学期。友だちの顔ぶれや教室にワクワクする一方で、多くの子どもが緊張を抱える時期でもあります。
「新学期を迎えた子どもたちは、新しい環境に慣れようとアンテナを張り巡らせています。友だちとの距離感、教室の雰囲気などを観察し、気が張っている状態です」と話すのは、長年親子のカウンセリングをしてきた臨床心理士の安川禎亮さんです。
学校の保健室から生徒たちの健康を見守ってきた元養護教諭の吉川和代さんも「新学期がいい形で切り替わる子もいれば、張り切りすぎて疲れてしまう子も。子どもによって4月の様子はさまざまです」と話します。
「4月は行事も多く気が紛れているので、実は保健室に来る子は少ないんです。一方、心身の疲れが表面化して保健室に来る子が増えるのは5月。新しい環境に慣れ、一息ついたところでガクッとくる子が多いです」(吉川さん)
「元気だと思っても大きな疲れを感じることがあるので、日頃から体調やメンタルをよく観察してほしいですね」と、安川さんは強調します。
無意識のうちに体に出るのはナゼ?
ストレスがあると子どもたちはどうして体調を崩してしまうのでしょうか?
「大人でも緊張すると胃がキリキリ痛むなど、心と体はつながっています。頑張ろうと気が張っているときは交感神経が優位で、リラックスしているときは副交感神経が優位。緊張や不安が大きくなると、この切り替えがおかしくなり、自律神経も乱れてしまいます。『眠りたくても眠れない』『食べたいのに食欲が出ない』『体がだるい』『やる気が出ない』など、自分の意思と関係なく身体症状に現れるのです」(安川さん)
子どもの繊細な心の変化に気づくのは難しくても、心配の種は探したい。そんなときは「ストレスサインをとらえて体と心の両方を観察するといいですね」と安川さんは話します。
「子どもを観察すると、気がかりや心配、疲れに気づいて早めに対処できます。
『子どもだからすぐによくなる』『怠け心が出ているのでは』と思うのではなく、いったん子どもの不調や気持ちに寄り添って、じっくり話を聞こうという姿勢が大切です」(安川さん) 疲れや緊張は心の不調だけでなく注意力も下げます。
「学校ではストレスで集中力が鈍ると転んだりぶつかったりするけがも増えます。自分の体調を上手に表現できない低学年はうまく言えないことも多いので、『気持ち』や『体はどのような感じがするのか』など、子どもの言動にじっくり耳を傾けてほしいと思います」(吉川さん)
「子どもの様子がいつもと違う」「なんとなく体調が悪そう」。そう感じたら、下の「子どもの観察ポイント」の項目をチェックしてみましょう。
【これってストレスサイン? 子どもの観察ポイント】
□ぐっすり眠れていない様子
□睡眠時間が不規則
□朝ボーッとしている
□いつもより口数が少ない
□すぐ疲れを訴える
□食欲がない
□お通じが不規則
□朝起きられない
□支度をしたがらない
□学校の行き渋りがある
□腹痛や頭痛を訴える
□肩や首が凝っている
□笑顔が少なくなった
□自分のことを話さない
□ときおりわけもなく泣く
これってストレスサイン? 子どもの観察ポイント
これってストレスサイン? 子どもの観察ポイント
体、考え方、行動の 三つでストレスを緩和
ストレスに心や体が反応して変化を見せるのは、ごく当たり前の反応で悪いことではありません。ただし、ストレスにうまく対処する方法を知っておくことで、心や体が疲れ切ってしまう前に回復させることができます。
そのために有効な対処法は三つ。「体をゆるめる」「考え方を変える」「行動を変える」です。
「なかでも体への働きかけは、子どもたちも変化を実感しやすいので、最初に取り組んでみるといいですね。親子で一緒にやってリラックスするのもおすすめです」(吉川さん)
親が子どものありのままの状態を受け止めて、その言葉に耳を傾けることも大切です。
「子どもに『がんばれ』『大丈夫』と励ますより、『しんどいよね』とその気持ちに寄り添ってあげてください。何かひとつうまくいかなくても、それで子どものすべてがダメなわけではありません。子どものつらさを理解してあげることこそが、子どもにとっては一番うれしいことで、安心することができます」(安川さん)
ストレスを軽くする3つのポイント
(取材・文/工藤千秋)
安川禎亮さん
〇安川禎亮/北海道教育大学大学院教育学研究科教授臨床心理士。NPO法人「教師応援ネットワーク奈良」理事長。ストレスマネジメント治療を導入し、小学生から高齢者まで幅広くカウンセリングを行ってきた。著書に『子どものストレスに対応するこつ』(共著、合同出版)などがある。
吉川和代さん
〇吉川和代/奈良県五條市子どもサポートセンター
訪問指導員。公認心理師。小・中学校養護教諭として長年にわたり教育現場でストレスマネジメント教育を実践。NPO法人「教師応援ネットワーク奈良」理事などを担う。著書に『子どものストレスに対応するこつ』(共著、合同出版)がある。
AERA with Kids+
2024/04/10 16:00