江口祐子
「苦手な相手と無理に仲良くならなくていい」 新学期の子ども&ママ友付き合いのヒントとは
写真はイメージ(iStock)
いよいよ新学期。新しい学校やクラスを楽しみにしている子もいれば、不安を抱いている子もいるでしょう。「新しいママ友とうまくやっていけるか心配」といった親自身の悩みも多い時期ではないでしょうか。子育て情報誌『AERA with Kids』の編集を12年経験した元編集長が、新学期の親子向けにおすすめの本から、ヒントになる言葉を紹介します。<『子育て本ベストセラー100冊の「これスゴイ」を1冊にまとめた本』(ワニブックス)の中で紹介している本のなかから紹介しています>
新学期になると、子どもの環境は大きく変わります。新しい学校、新しいクラス、新しい担任……。特に重要なのは友だち関係。
「仲のいい子ができなかったらどうしよう」
「嫌いな子がいたらどうしよう」
誰と一緒になるか、誰と別のクラスになるかは、子どもにとって新学期の一大事です。
悩みの一因となるのは、「みんなと仲良くしなければならない」「友だちは多いほうがいい」という学校教育で刷り込まれたプレッシャーがあるからではないでしょうか。
そこでおすすめなのが『友達幻想 人と人との〈つながり〉を考える』(ちくまプリマー新書)。社会学を専門とする著者の菅野仁氏が、人間関係で初めてつまずきを感じやすい中・高校生に向けて書いたもの。小学校高学年ぐらいから読めそうです。本書にはこうあります。
「基本的な発想として、共同体的な凝縮された親しさという関係から離れて、もう少し人と人との距離を丁寧に見つめ直したり、気の合わない人とでも一緒にいる作法というものをきちんと考えた方が良いと思うのです」(『友達幻想 人と人との〈つながり〉を考える』より)
苦手な相手と無理に仲良くなろうと頑張らなくていい、ただし気の合わない人とでも一緒にいる作法を身につけよう、という提案は実践的で心が軽くなります。
SNS上でのコミュニケーションや距離感のとり方なども教えてくれているので大人が読んでも役立つ一冊です。
同調圧力の正体を知るためには
学校でも会社でも「みんなと合わせなくてはいけない」という「同調圧力」はあります。特に日本はこの同調圧力が強い国、と言われていますが、この同調圧力の正体を知るためにうってつけなのが『「空気」を読んでも従わない 生き苦しさからラクになる』(岩波ジュニア新書)。こちらも小中学生から大人まで幅広く読める本です。
著者は劇作家・コラムニストとしても有名な鴻上尚史さん。AERA dot.での優しく、軽妙な人生相談の連載も人気です。鴻上さんは同調圧力という言葉について、子どもたちにこう解説しています。
「『世間』には、『みんなと同じことをしないといけない。みんなと同じ格好をしないといけない。みんなと同じことを言わないといけない』というプレッシャーというか圧力があります。少し難しい言葉で『同調圧力』と言います。」
「世間」とは学校や会社の仲間、近所の人たちなど自分と関係のある人たち。何も関係がない人たちは「社会」。つまり、「みんなと一緒でなくてはいけない」というつらさから抜け出すためには、「世間」とどう付き合っていけばいいのかを知っておけばいいのです。このように世の中の人間関係を線引きするだけで人付き合いはぐんと楽になります。
ママ友や職場での女性同士の人間関係には
同調圧力の中でも、特にママ友や職場での女性同士の人間関係に悩みを抱えている人たちは、『整理整頓 女子の人間関係』(サンクチュアリ出版)がおすすめです。著者は、精神科医で「対人関係療法」の第一人者として人間関係に関する著書も多い水島広子先生。
この本では、女性にありがちと言われる「嫌な部分」をカッコ付きの「女」と定義し、そんな「女」に巻き込まれて、精神が疲弊しないための方法をシチュエーション別に教えてくれます。
驚くのが、「女」の対応には「女を癒す」ことが大事、とあること。つまり、「女」を否定せず、ありのままを受け入れてあげましょう、と提案しているのです。実は、「女」が持つ特徴の多くが、虐待やいじめなどにより、他人から傷つけられてきた人たちに見られる特徴と共通しているとのこと。
・自分の意見と違う意見を持っている人を見ると「自分が否定されたと感じる」
・人を見た時に「自分の敵か味方か」を区別したがる
などです。そんな「女」のいやし方は本書でどうぞ。
子育てをしていると、「この状況はどう対応したらいいのだろうか」と迷う場面に多く遭遇します。子どもが言うことを聞いてくれない、友だちや先生の言葉に傷ついているようだ、最近何かと反抗的だ、などなど。
ネットで調べればいろいろな答えがすぐに出てきますが、専門家によって書かれた子育て本のほか、社会学の本、自己啓発本などに思いもかけないヒントが見つかったり、自分自身の生きる上での軸が発見できたりすることがあります。
効率はあまり良くないかもしれませんが、あれこれ回り道をしながら答えを探していくことこそ子育ての醍醐味のような気がします。今まであまり触れてこなかった人の本でも、たまには書店に行って子育て本・教育本コーナーを覗いてみてはいかがでしょうか?
(教育エディター・江口祐子)
AERA with Kids+
2024/04/05 11:00