水際 小島日和著 《ベスト・レコメンド》
週刊朝日今年の中原中也賞を受賞した『水際』は、小島日和の初めての詩集。昨年7月、インカレポエトリ叢書の第1弾として刊行された。 耳慣れない「インカレポエトリ」とは、いくつかの大学で詩について講義をしている詩人たちが声をかけあい、横断的に学生や卒業生の詩作を応援していこうと発足した団体のこと。一昨年から活動...
今年の中原中也賞を受賞した『水際』は、小島日和の初めての詩集。昨年7月、インカレポエトリ叢書の第1弾として刊行された。 耳慣れない「インカレポエトリ」とは、いくつかの大学で詩について講義をしている詩人たちが声をかけあい、横断的に学生や卒業生の詩作を応援していこうと発足した団体のこと。一昨年から活動...
インタビュアーである著者は、自身の幼少期からの経験をもとに、他者を抑圧する「男性性」はどのように生まれ、どうすればそこから脱却することができるのかを考察する。「男性性」はもともと存在するものではなく、社会による刷り込みから生まれるものだという。「男の子なら活発に」といった規範や、思春期にこうじる女...
広島大学の学長と副学長による中国故事の解説書。「朋有り遠方より来たる」から、「天網恢恢、疎にして失わず」「病膏肓に入る」などまで、孔子・孟子を始めとする諸子百家の遺した言葉を31点紹介しつつ、漢文学者である佐藤副学長と、外科医である越智学長の、専攻領域をまたぐ対談が、解説に彩りと奥行きを添える。 ...
女性宮家は創設すべきか、女性天皇は認められないのか。皇室問題はいま、大きく揺れている。工藤隆『女系天皇』はそんな議論に一石を投じる快著。 天皇は古来、万世一系の男系によって継承されてきた。と私たちは聞かされてきた。でも、その「古来」っていつ?『古事記』『日本書紀』だと人はいうけど、じゃあその前はど...
昨年の2月、画家の筒井伸輔が亡くなった。享年51。食道癌だった。父は作家の筒井康隆。朝日新聞の連載小説『聖痕』の、伸輔による挿絵を覚えている人は多いだろう。 康隆の短編「川のほとり」は、亡くなった息子が夢の中にあらわれるという私小説である。三途の川のほとりで、父と息子が語り合う。父はそれが夢である...
オウム真理教の信徒たちを写した映画「A」の監督が、知的障害者19人が殺害された神奈川県相模原市の津久井やまゆり園事件の深層に迫るため、裁判や報道にかかわった精神科医やジャーナリストらと話し合う。 著者は被告との面会時に抱いた違和感や疑問を対話の相手にぶつけていく。1989年に発覚した宮崎勤事件を追...
私たちは普段の生活の中で、どのくらい物理学の視点でものごとを考えるだろうか? 知っていたとしても宇宙を構成する素粒子が17種類だということくらいではないか。 著者は、超ひも理論や素粒子論を専門とする理論物理学者だ。その考え方は物事を抽象化し、現象が発生する理由を論理的に考察することだ。つまり極論を...
渋沢栄一を主人公にしたNHK大河ドラマ「青天を衝け」がスタートした。『論語と算盤』(1916年)は70歳を超えた渋沢が自らの思想と人生を語った話題の本。そのエッセンスを集めた抄訳が『現代語訳 論語と算盤』(守屋淳訳)である。 要は功成り名を遂げた人の説教めいた自己啓発書。あまり期待しないほうがいい...
『蛇イチゴ』でデビュー以来、自身の原案とオリジナル脚本にこだわって長編映画を撮ってきた西川美和監督。寡作ながら、どの作品も国内外で高い評価を受けている。しかし、彼女の新作『すばらしき世界』には原案となる小説があった。 西川監督が惚れこんだのは佐木隆三の『身分帳』だった。1990(平成2)年に刊行され...
出物腫れ物所嫌わず。本書の主役は「ウンチ」である。水洗トイレ普及率90%以上の日本では、どこでも快適に用が足せる。だが果たして私たちは、あの水流の向こうの世界を想像したことがあっただろうか。 トイレの汚水は、長い下水道を経て下水処理場に運ばれる。本書では、処理場で汚水を嗅ぎ、国土交通省や不動産会社...