書評『オルタネート』加藤シゲアキ著 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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《今週の名言奇言 (週刊朝日)》

オルタネート 加藤シゲアキ著

斎藤美奈子書評#今週の名言奇言

言いたいことあるならな、ちゃんと面と向かって言えよ!

 アニメ風の表紙。意味不明な表題。作者は人気アイドルグループNEWSのメンバー加藤シゲアキ。このたび直木賞にノミネートされた『オルタネート』はちょっと見、大人の読者が敬遠しそうな要素が満載である。

「オルタネート」とは高校生だけが参加できる架空のSNS(マッチングアプリ)のこと。出会いも別れも日々の情報交換もコレなしにはじまらない高校生たち。とかいうと、いかにも今時な感じだけれど、中味は意外に正統派の青春小説だ。

 物語の主な舞台はミッション系の一貫校・円明学園高校。

 3年生の新見蓉は調理部の部長で「ワンポーション」なる高校生の料理コンテストに命をかけている。学校対抗のこのコンテストで蓉たちは昨年、決勝で敗れた。今年は絶対優勝したい。自然、後輩にも厳しくなる。

 たら(木に怱)丘尚志は大阪の高校を中退して上京してきた。小学生の頃からドラムの腕を磨いてきた尚志は、今は円明学園に通う安辺豊ともう一度バンドが組みたいのである。が、ギターの名手だった豊はバスケ部にいて、もうギターは弾かないという。

 ひとりは料理、ひとりは音楽。思いっきりリア充じゃございません? 特に蓉たちの料理のアイディアは本格的で、このままレシピブックになりそうだ。オルタネートをやらない蓉と、高校をやめてオルタネートが使えなくなった尚志。SNSはふたりの人生を左右はしない。だが、奨学生の伴凪津だけはオルタネートに依存気味。理想の相手に出会えると信じている。

 青春小説は時代の風俗をもっとも敏感にとらえる装置だ。綿矢りさ『インストール』から20年。インターネットを扱う高校生の物語も、ここまで来たんだなという感じ。<オルタネートしてないだけで、原始人扱いだね>と苦笑する蓉。最後には<言いたいことあるならな、ちゃんと面と向かって言えよ! お前も、私も!>と叫ぶ凪津。直木賞はとれなくても映画かドラマにはなると思うな。

週刊朝日  2021年1月22日号


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