書評『黄金の60代』郷ひろみ著 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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《今週の名言奇言 (週刊朝日)》

黄金の60代 郷ひろみ著

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斎藤美奈子書評#今週の名言奇言

僕は大器晩成だ、と信じてやってきた。

 最近何かと騒がしいジャニーズ事務所だが、この人ももとはジャニーズ系のアイドルだったのよね。郷ひろみ『黄金の60代』は、今年65歳を迎えたシンガーの男性誌の連載エッセイ5年分をまとめた本である。

 冒頭で、いきなりのけぞる。

<僕は大器晩成だ、と信じてやってきた>。還暦を迎える年の記述である。<ついに今年から、その成功への60代が始まる>。これが負け惜しみではない証拠に彼はいうのだ。

<人は人生において、若くない時期を長く生きるのだ。ならばそこを充実させていく以外に人生を謳歌し、満ち足りたものにする方法はない>のだと。

 60代に向けて着々と準備もしてきた。40代半ばから歌の勉強のためにニューヨークに3年ほど行き、50代で右利きを左利きに変え、あと数年で60歳という頃に酒をやめた。

 健康を気遣うようになったのは20代後半。<ひろみくんの体って、思ったよりしまってないよね>。この言葉に衝撃を受けた彼は自己改革に乗り出した。

 そういう人の著書だからか、この本には「遊び」の部分がないのよね。本の大部分は心身を鍛える話とその理屈である。朝は青汁と漢方薬を飲んでストレッチ。夕食はできれば5時から腹六~七分目。就寝前はストレッチポールでリラックス。週に3回は専属のトレーナーについてトレーニング。週1でスポーツマッサージとネイルをし、2週に1度は美容鍼を打ち、月1でゴルフのレッスンを受け歯医者で口内をチェックする。<僕は運動から人生を学んだ。それがいまの僕を支えている>

 デビュー48年。年に100回のコンサートをこなす体力と精神力は並々ならぬ精進の賜なのだ。ベストセラーになった『ダディ』(1998年)は元妻との離婚に至る経緯を自虐的に綴った本だったけど、20年で人格まで変わった!? 人生の目的は<郷ひろみを続ける>こと。あきれるほどにストイック。いろんな意味でアッパレ。

週刊朝日  2020年12月25日号


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