会社では決められた業務をこなし、プライベートではネットやSNSで時間を潰す。そんな停滞する日常を、好転させる力を持った本だ。本職は大学教授でありながら、多くの本を書き、テレビへの出演も多い著者だ。「思考中毒」になれば幸せな人生を送ることにつながる、という本書の言葉には十分な説得力が感じられる。

「思考中毒」といっても、よからぬ妄想や堂々巡りの類ではない。自らの頭を使って考えることを習慣化することである。例えば、似ているものの差異を見極めたり、違うものの類似点を見いだしたり、実に徹底している。著者の生活習慣だけでなく、著名人の事例も紹介されていて興味深い。

 思考が深まれば、生きている手応えはあがるだろう。常識が揺らぐいま、従来の価値を追うのをやめて「思考中毒」になってみるのも悪くない。
(吉村博光)

週刊朝日  2020年11月27日号