本市の慈恵病院が2007年に開設した「赤ちゃんポスト」について、地元の熊本日日新聞の記者が粘り強い取材を行い、美談に留まらない「真実」をまとめ上げた。

 19年3月までに預けられた144人中、病院が想定した生後1週間以内の早期新生児は76人。残りの約半数は、ある程度育った赤ちゃんだった。病院は「生後3カ月以内で特別養子縁組を」と訴えるが、それを超えて預けられた子どももいる。19年末に導入された、妊婦が匿名のまま病院で出産できる「内密出産」のあり方や海外との比較など取材は幅広い。

 著者は「本来聞かねばならないのは、(略)赤ちゃんポストに預けられた子たちの声である」という。子どもたちや受け入れ先の家庭から話を聞く過程で、自身も2児の母である著者の心の揺れが感じられ、命を預かることの重みを改めて実感させられる。(若林 良)

週刊朝日  2020年11月27日号