平安時代末期から親しまれてきた絵巻物。鑑賞には一定の知識やコツが必要とされるというそれを、まんがの文法で読み解き、現代人にとってなじみやすいコマ割りの形に再構築している。表題作のほか、『道成寺縁起』と『土蜘蛛草子』も収録。

 たとえば表題作は、貴族の娘を救出せよとの勅命を帯びた源頼光が鬼退治に赴く物語だが、「超自然的存在の助力でアイテムを入手して戦いに挑む」など、現代にも通じる普遍的な物語構造を具備していることが、「まんが訳」だと一目瞭然となる。おどろおどろしいクリーチャー、血なまぐさい描写など、人々の関心が昔から変わらなかったこともしのばれる。

 コマ割り技法の精緻な分析に基づく「まんが訳」で、古来の視覚的メディアに新しい命が吹き込まれるのを見る思いだ。(平山瑞穂)

週刊朝日  2020年7月17日号