書評『武器としての「資本論」』白井聡著 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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武器としての「資本論」 白井聡著

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永江朗書評#ベスト・レコメンド

いまでもマルクス

 結局のところ、政府なんてたいして役に立ちやしない、ということが新型コロナでよくわかった。むしろ、いらんことばっかりやってる感。布マスク2枚配布とか、怪しい広告会社にカネが落ちるようにしたりとか。

 モヤモヤした気分を抱えて、白井聡『武器としての「資本論」』を読んだ。著者は『永続敗戦論』で知られる若手思想史家。真っ赤なカバーを外すと黒い表紙があらわれる。いまさら『資本論』なんて、と思わなくもないけど、一読してびっくり。モヤモヤ気分がパッと晴れました。

 いまの世の中の仕組みがどうなってるかを理解するには、マルクスの『資本論』が使えるよ、というのがこの本の趣旨である。喫茶店でのおしゃべりがベースなので、読みやすく分かりやすい。イノベーションが起きてもぼくらが幸福にならない理由など、すごいことが書かれている。

 マルクスが『資本論』第1巻を書いたのは、150年以上も前のことだ。ところが、白井のこの本を読むと、マルクスの分析が当時よりもむしろ現代のほうが当てはまると痛感。なぜなら、新自由主義の時代になって、世の中のあらゆるものが商品化されたからだ。

 共同体がぶっ壊れて、土地(生産手段)も人(労働力)もカネで買える商品になった。商品が商品を生む徹底的な資本制社会だ。

 新自由主義に骨の髄まで搾り取られないためにはどうしたらいいか。革命だ、銃をとれ、とは言わない。食をはじめ生活の質を下げようと迫ってくる企業や政府に対して、「こんなものが食えるか」と声を上げること。大切にすべきなのは感性なのである。

週刊朝日  2020年7月17日号


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