日本人はどのように日本列島にきたのか。陸続きだった大陸から歩いてやってきたというのは誤りで、今では、海を越えてやってきたというのが通説らしい。しかし、我々の祖先は水平線の先の島をどのように認識し、海を渡ったのか。本書は、その謎を解き明かすため敢行した命がけの航海の記録だ。

 当時使用されていたと考えられる材料や道具で舟をつくるところから実験は始まる。草を束ねた舟や竹の筏舟などを試し、最終的には木をくりぬいた丸木舟に賭ける。目指すは、台湾から約200キロ先の沖縄・与那国島だ。

 海図もない中、体力は限界に達し幻覚と闘いながら、櫂をこぐ。過酷な航海実験に映るが、祖先たちには「実験」ではなかった。彼らはなぜ海の向こうを目指したのか。興味は尽きない。(栗下直也)

週刊朝日  2020年6月12日号