「そこ聞きますか。ちょっとうるさいですよ(笑)」と答えるやりとりが絶妙のインタビュー本だ。リブロ池袋本店などで36年間書店員を務めた矢部さんに、「本の雑誌社」営業マンの杉江由次さんが「販売の極意」を聞いた。

 ただのノウハウ集ではない。本に挟まれるスリップ(短冊)の扱い、平台の積み方、返品の見切りなど、図解も交え、その知恵と工夫を語る。書店員を悩ませるのは、養老孟司『唯脳論』のように複数のジャンルにまたがる本だ。「本籍地」をどこにするか、著者は「何を生業にしてるか」で決めるという。

 本は「売る」もの。置き方次第で変わるといい、「子育て」にもたとえる。「極端なこと言えば、仕掛けて売るって今日入った子でもできると思います」といった職人気質のタンカが小気味よい。
(朝山実)

週刊朝日  2020年3月27日号