週刊誌のベテラン記者である著者は無類の釣り好き。特に渓流釣りにハマり、全国各地で事件が起きるたびに出張し、釣りざんまい。「釣り糸をたらす快感にハマってしまい、地方のスクープネタを必死で拾うようになった」という。

 本書では20年前に週刊朝日がスクープし、政界を揺るがした汚職事件「KSD事件」の経緯も明かされている。「群馬での渓流釣りの合間にネタを仕入れ、段ボール一箱分の資料の情報提供があったのがきっかけ」という。ほかに連続テレビ小説「あまちゃん」ロケ秘話、「紀州のドン・ファン騒動」など、釣りという趣味がなければものにできなかったスクープの数々が語られている。

 モットーは「無理と思った場所には行かない竿をださない」「渓流釣りには命を懸けない」。なるほど、取材の掟でもあるようだ。(上田耕司)

週刊朝日  2020年3月13日号

著者プロフィールを見る
上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

上田耕司の記事一覧はこちら