民族音楽学の第一人者が、古代から現代までの日本音楽の歴史を紹介した。

 日本音楽のはじまりは縄文時代。粘土を焼いて作った、鈴のように振ると音がする土鈴が残っている。『古事記』『日本書紀』には琴の音色のことが記され、男女が歌を交わしていたことがわかっている。仏教が伝わると祈りの場に音楽が大きな役割を果たすように。中世は地域の独自性が強くなり、そこに音楽や芸能が生まれ、現在行われている多くの祭りにつながっていく。続いて近世になると歌舞伎と人形浄瑠璃が誕生する。最後は尺八を作曲に取り入れた武満徹にまで広がる。沖縄やアイヌの音楽やキリシタン音楽のことも。

 著者の博識に感心させられながら、「多くの種類の音楽が時代を超えて使われてきた」という日本音楽の特徴を実感できる。(生田はじめ)

週刊朝日  2020年3月6日号