田原総一朗さんの取材によると、アメリカの遺伝子工学の驚異的な進歩により、今後10年ほどで大半の病気が克服され、ヒトの寿命は120歳まで延びるだろうという。

 DNAが持つ遺伝情報の総称であるゲノムの編集により、遺伝子レベルで病気の治療が進めば、がん治療はこれまでの抗がん剤に比べ、格段に簡単になる。また京都大学の山中伸弥教授が開発したiPS細胞を使った再生医療が成功すれば、病気で苦しんできた人にとっては夢のような治療も実現する。しかし、そうやって延びた寿命はどのように生かせばいいのか。また社会や制度は人生120年時代に対応できるのかと田原さんは問う。

 人工知能の導入でヒトの遺伝子の改変が進みつつある現在。改変はどこまで許されるのか。人類は深刻な問題に直面している。(金田千里)

週刊朝日  2020年2月28日号