キャッシュレス決済が急激に普及する中、いずれ「お金」自体が消滅するマネーレス時代がやってくる──本書が掲げるのは、そんな突飛な仮説だ。しかもそれは、30年以内がめどだという。

 ずいぶん急な話のようだが、現にわれわれを取り巻いている先鋭的な事例の数々に目を向ければ、あながち夢物語とも思えない。フリマアプリがネットを通じて需給の迅速な仲立ちを果たす一方、シェアリングエコノミーが進展し、中央銀行の裏づけのない暗号資産がはびこる時代だ。従来の労働の多くを機械が代替する中では、働くことの意味もおのずと変わっていく。

 すでにわれわれは、価値観の大きな地殻変動の只中にいる。来たるべき時代をどう生きるのか。それを考えずにはいられなくなる壮大な思考実験が、本書の肝である。(平山瑞穂)

週刊朝日  2020年2月21日号