現存する日本最古の学生寮でありながら、京都大学から退去を迫られている「吉田寮」の内部を写した写真集

 相部屋の共同生活。今風の男女に交じってバンカラを思い起こさせるいでたちの若者。さらにに鶏。寮生の自治によって100年以上にわたり守られてきた「時間」がうかがえる。目を引くのは本の多さだ。図書館のようなマンガ部屋もある。

 木造の天井を伝う配線。柱や壁に留められて、ひらめくビラ。蛍光灯の下、廊下に置かれた机を挟み、将棋をしているのか討論中なのか二人が向き合っている。それをサンダル履きの学生が立って眺めている。じっと見入ってしまう写真が続く。

 59歳で入学した元銀行員や、入寮パンフを見て受験した学生など、入寮の動機も様々。これが消えるとしたらもったいなさすぎる。(朝山実)

週刊朝日  2020年2月21日号