書評『逃亡派』オルガ・トカルチュク著/小椋彩訳 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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《ベストセラー解読 (週刊朝日)》

逃亡派 オルガ・トカルチュク著/小椋彩訳

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永江朗書評#ベストセラー解読

逃亡派 (EXLIBRIS)

オルガ トカルチュク,小椋 彩

978-4560090329
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ノーベル賞受賞作

 今年のノーベル文学賞は、セクハラ問題等で中止になった昨年の分も含めて2人が受賞した。2018年度の受賞者が、ポーランドのオルガ・トカルチュク。『逃亡派』は彼女の代表作で、ポーランドで最も権威あるニケ賞、そしてイギリスのブッカー国際賞も受賞している。

『逃亡派』の原著は07年に刊行されたが、小椋彩による日本語訳が出たのは14年。あまり大きな話題にならなかった。しかし、ノーベル賞受賞発表と同時に注文殺到。めでたく重版となった。

 ぼくもさっそく読んだ。面白い! すばらしい! いつまでも読んでいたいと思った。

 約400ページのこの物語は、116の断章からなる。それぞれの章は、数ページで終わり、長いものでも30ページくらい、短いものだと数行。たった1行の章もある。

 繰り返し登場する人物もいるが、それぞれの章はバラバラ。描かれる時代もまちまち。なんというか、箱の中に色も形も大きさもまちまちのモザイクタイルがあって、それをランダムに取り出して並べていくような感じだ。できあがってみると、大きな世界があらわれる。

 共通しているのは「旅」であり「移動」である。「解剖」と「標本」についても、くり返し出てくる。ちょっとグロテスクなところもある。たとえばショパンが死んだ後、彼の心臓がどのように取り出され、どんな旅をしたのかとか。剥製にされてしまった父の埋葬を嘆願する娘の手紙とか。数年前に日本でも話題になったプラスティネーションによる人体標本のことも。

 世界文学のスケールの大きさを実感した。

週刊朝日  2019年12月6日号


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