兄弟姉妹の悲喜こもごもの関係性が、花言葉をモチーフにした六つの短編で描かれる。

 周囲の目を気にせず自分のやりたいことに挑戦してきた妹に、ねじれた嫉妬心を持つ姉。ある小説を読み、連絡が取れない兄へと思いを馳せる弟。ともに水泳選手となることを渇望しながら、一方が事故で足に麻痺を残してしまった双子。優柔不断に見えるラノベ作家の弟に、苛立ちを隠せない姉──。それぞれの境遇や性格はさまざまだが、実際にツイッターで話題となった「花言葉診断」が、各話共通の軸となる。自分の名前を打ち込むと表示される花言葉は、時には救いとなり、時には絶望を呼び込んでいく。

 それぞれの関係性の丁寧な表現はもちろん、各人物の繊細な心情の描写に魅了される。平明で読みやすいが、読了後の余韻は深い。(若林 良)

週刊朝日  2019年10月25日号