1952年生まれのフランスの詩人作家による散文集。「この雑多な散文集は(中略)ことばが行き来する蜂の巣のような本」と序文で著者自身が定義するが、「雑多な」と言うにはあまりに詩的だ。

 では「散文詩」かと言えば、それもまた違う。「散文」は「詩」と関わりを持ちつつ、しかし距離を保ちながら、近づいたり遠のいたりする。

 本書では、蜜蜂、仔、天使といった素材について、さらに文学、絵画、音楽といった主題について、短い文章や引用を重ねることで全体を描いてゆく。それはまさに「見えないものを集める蜜蜂」として、その思索の軌跡をことばによって刻みつけているのだろう。蜜蜂のとおった軌跡は野原を香らす金の糸となり、やがて空中に蜜の布を織りあげる。そのうねりと変奏に、しずかに耳を傾けたい。(後藤明日香)

週刊朝日  2019年9月6日号