「エロ」を切り口として、現代中国の知られざる姿を生き生きと浮き彫りにしている。

 たとえば、かつて「性都」として猖獗を極めた都市・東莞の興亡。綿密な調査に基づくその描写は実に興味深いが、衰退したのは習近平政権による摘発が原因。背景には利権を奪うことによる政敵の追い落としがあったというあたりがいかにも中国的だ。

 中国におけるラブドールの隆盛を追ったくだりもおもしろい。日本製に迫る高品質のドールがなかば公然と量産され、日陰者のイメージが希薄なのは、一人っ子政策が生んだ男女のいびつな人口比を背景に、生涯伴侶を見つけられない男性が3千万人に上るという事情もあるとか。

 その他LGBT事情なども含め、人口が多く、政権の意向に左右されやすい、かの国ならではの性の最前線に触れることができる。(平山瑞穂)

週刊朝日  2019年9月6日号