文化人類学者で京都大学人文科学研究所准教授の著者が、調査で訪れたアフリカや京都の日常を切り取ったエッセイ集だ。

 著者はタンザニアやガーナ、インドで宗教実践や環境運動などについてフィールドワークを続けている。それらの経験から「人類学的な思考やイメージと絡まりあって生まれ」たのが本書だ。水俣病の話から地元の人々の食文化へ問いは進む。京都の若者が路上にコタツを持ち出して囲んでいる場面に遭遇し、「目線を変えてみる」ことの重要性に思いをめぐらせる。

 自身の子育てからアフリカの精霊や神話までテーマは多岐にわたるが、そのどれにも人間の生のありようがみずみずしい言葉で綴られている。私たちの日常もまた文化人類学のフィールドであることに気づかせてくれる。(三宅香帆)

※週刊朝日 2019年8月9日号