哺乳類という種がいかなる進化の道を辿ってきたのかを、分子生物学をはじめとする最新の知見を織り交ぜながら総覧的に説く意欲作。

 精巣が陰嚢という形で体腔の外部に突出しているのは哺乳類だけ。大事な部分をなぜ危険に晒すのか。冷却するためという、従来有力だった説が、今は揺らいでいる。母乳や乳腺はいかにして発生したのか。哺乳類のオスの多くが子育てに関与しないのはなぜか。そうした疑問の数々に明確な解答が与えられて、膝を叩くことしきりだ。

 著者が強調するのは、哺乳類の獲得してきた形質が、「どう生きるかという問いに対するひとつの答えにすぎない」ということ。ヒトを「万物の霊長」とする見方にも、再考を促される。

 すべてのヒトが、自らの起源を知るために読んでおくべき一冊。(平山瑞穂)

週刊朝日  2019年8月2日号