ヤフーニュースがネット上に掲載した本書と同名のインタビューが本になった。作家の朝井リョウや映画監督の森達也ら著名人も登場するが、ほとんどは美容師やドアマンなど市井の人々。阪神・淡路大震災の遺児や元ハンセン病患者もいて計33人の話が並ぶ。

 平成から令和へ変わる境目を前に、自らの半生とともに世の中の流れを振り返る語りが多い。プリクラを開発した女性は、ブームの狂乱の中で働き、今は介護職に就く。昭和の時代から靴磨きや助産師など同じ仕事を続けて、社会を定点観測してきた人の話もある。

「平成」が彼らに見せた顔は一様ではない。個人の自由を喜ぶ人も、家族の崩壊を感じる人もいる。特定の物語や方向性を見いだしづらい時代だったのかもしれない。その中で生き抜いてきた人の声が真摯に響く。(内山菜生子)

週刊朝日  2019年7月26日号