生涯を労働運動に捧げた男の変貌を追う。『昭和解体 国鉄分割・民営化30年目の真実』の続編にして、JR東日本の経営陣に強い影響力を有してきた男の人物伝だ。

 なぜ、戦闘的なストライキ戦術から「鬼の動労」と呼ばれた労働組合が、中曽根政権による「国鉄解体」に協力する道を選んだのか。JR発足後、巨大労組を領導、徹底した反対勢力潰しを図った松崎明とはどういう人間だったのか。

 膨大な資料を駆使。政権中枢にパイプをつくる一方で、疑惑をもたれ続けた「革マル派大幹部説」の真相に迫っていく。特に後半、革マル派創始者・黒田寛一との、組織を二分する拮抗関係を暴露。ある者は内ゲバで落命し、ある者は独善化に嫌気がさして離反するなど、側近が消えてゆく過程はロシア革命史の暗黒を読むかのようでもある。(朝山 実)

週刊朝日  2019年7月19日号