映画批評や表象文化論を大学で教えながら、自宅で料理の腕をふるう著者。丸元淑生、土井善晴らの料理本を紹介してゆくのだが、アプローチの仕方が面白い。

 たとえば丸元の「あさりのスパゲッティ」。4人前のレシピであさりは2キロと書いてある。スーパーで買うなら10パック相当なので、著者は「ありえない」とあきれる。完成写真の皿は、あさりでパスタが隠れている。なぜこれだけの量?理由を知ると冒険心をそそられるというあんばいだ。

 批評の真骨頂は、サンドイッチの発祥をひもとく章。パンで肉をはさむ。それだけなのに美味しいと感じるのはどうしてなのか。「歯は肉に突き刺さってゆく」「口の中に留まるパンのかけらの感触」……。映画のシーンを繊細に再現するかのような説明を読むと……、もはや食欲を抑えきれない。(朝山 実)

週刊朝日  2019年7月12日号