中欧の国ポーランドの紆余曲折の歴史をたどることで、ヨーロッパ史を見直す視座を与えてくれる歴史物語である。

 同国は16世紀のルネサンス期に、多民族が共存する黄金時代を築いたが、18世紀末、三つの隣国に領土を奪われて国が滅亡した。粘り強い抵抗を続けるなか、19世紀初めにナポレオンの進軍によってワルシャワ大公国となるが、すぐにロシア帝国に支配される。20世紀には、ロシア革命に伴って独立を果たしたのもつかの間、ナチスドイツとソ連に分割占領されてしまう。戦後はソ連の傀儡政府に支配されたが、東西冷戦の終結を経て、ようやく自由を手にした。

 第2次大戦中に日本大使館が占領下の孤児院を救った話など、日本との接点も紹介される。同国の歴史を知れば、ヨーロッパに対する見方が大きく変わる。(大野和基)

週刊朝日  2019年7月5日号