「国語の授業はつまらない?」という問いから始まる本書は、どうすれば学びが面白くなるのかという問題意識に貫かれている。著者は高校教師の経験を持つ物語論(ナラトロジー)の専門家。理論と授業の実際とをバランスよく紹介しながら、人文系の教養の意義を説く。

 著者は、現代文の授業で受け手が感じる不満の一因を「教育にふさわしい」教材ばかりを選定することにあると述べ、多様な価値観を教材から学べるよう提言する。また、国語教育で求められる「論理的」な思考とはどんな能力かを確認し、じつは情報を精査する能力=「リテラシー」こそ重要なのだと説く。

 終章では森友学園問題の報道にも触れる。情報の送り手と受け手それぞれの偏向を知ることは、現代に必須の教養だろう。(石原さくら)

週刊朝日  2019年3月22日号