皇室を取材してきた著者が、初の民間出身の皇太子妃となった美智子さまの半生を振り返る。美しい振る舞いや優れた才能、控えめな発言に触れ、これまでの「軌跡」を「奇跡」のようだと記す。

 フランス革命を描いたコミック『ベルサイユのばら』世代の著者は、ルイ16世の王妃マリー・アントワネットの母マリア・テレジアの書簡を引用し、尊い教えを守れずに悲劇的な最期を迎えた娘と、教えにかなう振る舞いを続ける美智子さまを比較。その上で、妻として母として国民の期待を裏切ることなく、「戦後の皇室を救った」と讃える。

 次の皇室は「皇室らしさ」ではなく「その人らしさ」で国民に向き合うはずだと著者は説く。雅子さまと同じ時代を生きるものとして、新たな皇后像が描き出されて、国民からの人気が回復することを願っている。(金田千里)

週刊朝日  2019年3月8日号