国内外の現代文学から古典作品まで、「優雅」な読書について語ったコラムニストによる書評エッセイ集。海外の女子文化に造詣の深い著者らしく、ロマンスやエレガントさを大切にしつつ、聡明な語り口の文章が並ぶ。2004年に出版したブックガイドのあとに発表した文章が収録され、著者30代、40代の集大成となっている。

 昭和の文豪・獅子文六について綴った文章では、彼を「昭和のロマンティックコメディの達人」と評し、当時にして先進的であった彼のジェンダー観にスポットを当てた。獅子文六を読んだことのない読者にも興味を持たせる書評になっている。

「新乙女クラシック10冊」「文化系サブカル男子の憂鬱」などの題が並び、「役に立つ」読書に復讐するかのような、読書本来の楽しみを思い出させてくれる。

週刊朝日  2019年1月25日号