「ペット墓の前にはステーキや尾頭付きの鯛が供えてある」とペット霊園の僧侶がもらす。今や墓だけでなく、ペット用の位牌もある。近年、人間の葬儀は簡略化の傾向にあるのに、ペットの葬式は充実する一方なのはなぜか。元雑誌記者で僧侶でもある著者が、日本の供養の現場を回り、日本人の心を探った。

 ペットの供養については日本の仏教界でも論争が続いている。「人間に生まれてこそ往生可能」という否定派。弔う心が真摯なものであるならば「阿弥陀様は浄土へと導いてくださる」と真っ二つに割れる。動物供養やペット葬の歴史をたどり、蚊やゴキブリの慰霊祭、ハエの供養塔、生物とは言いがたいロボット犬の葬式まで探求の範囲は広がる。

 我々は「供養」という特別な行いに、いったい何を求めているのだろうか。

週刊朝日  2018年12月28日号