米国の著名な精神科医や心理学者がトランプ大統領の言動の危険性を論じた集会の記録集だ。直接診察していない人の精神状態について発言を禁じる米国の倫理規定をあえて破り、専門家の社会的責任を自らに問い、社会に警告する。

 ナチスに加担した医師の研究で知られるリフトン氏は、本来は悪とみなされるべきものが正常とされることを「悪性の正常」と呼び、それが米国社会に広がっているとし、その危険性を感知した専門家が果たすべき責任を説く。

 寄稿者たちは科学的知見に基づき、「病的ナルシシズム」「刹那的快楽主義者」などの用語を使ってトランプを分析。米国民の半数以上が「トランプ不安障害」だと指摘する。沈黙より警告が義務だと自負する彼らの切迫した言葉に、読む側の責任も考えざるを得ない。(福島晶子)

週刊朝日  2018年12月21日号