マラッカ海峡を中心とした東南アジア各国に「プラナカン」と呼ばれる民がいる。明代の中国から渡航した華人と現地住民との子孫のことだ。彩り豊かな美術品や雑貨で知られ、政財界に影響力を持つ。新聞記者である著者が、謎の多い彼らの実像に迫った。

 大航海時代に海上交通の要衝を拠点にした彼らは、貿易によりアジアと欧州をつないだ。国を超えて動き、富と力を蓄えた。プラナカン社会の重要人物たちを訪ねた著者は、彼らに共通する開拓者精神と「アジア時間」感覚に気づく。根無し草ゆえ変革を歓迎し、同時に、物事を数十年単位で考える。

 列強の侵略や現地住民との同化により存亡の危機にあるが、形を変えてでも生き抜くだろうと著者はいう。グローバル化の進む現代こそ、我々が彼らから学ぶべきことは多そうだ。

週刊朝日  2018年11月16日号