最も信頼していた人に20億円をだまし取られ、思わず口から出た言葉が九州弁の「わいたこら」。標準語でいえば「なんじゃこりゃ」だったとか。底ぬけの明るさと奇抜な言動で「宇宙人」とも称された元野球選手の自伝だ。

「文字をきちんと読めない」「交通事故に8回あって、全てで頭を打った」など著者らしいエピソードがちりばめられている。一方、天性のものと思われた「奇行」の数々が緻密な計算に基づいていることを告白したのが本書の最大の魅力。例えば、敬遠球を打ちサヨナラヒットにしたことで世間を騒がせた一件も、わざわざ練習していたというから驚く。

「天然キャラ」に映るが大胆さと繊細さを併せ持つ。落ち込みもすれば傷つきもする。だから、常に前を向く。多くの人の「新庄剛志」像が一新されるだろう。

週刊朝日  2018年11月2日号