一度は殺害を自供しながらも2013年に死体遺棄罪でのみ起訴された漫画喫茶経営者夫婦の事件を、被害者遺族に寄り添って追跡したルポだ。被害者女性には長年にわたり暴行されていた形跡があった。

 死体遺棄については懲役2年2カ月の実刑判決が確定。一方、検察官は殺人での立件を見送った。理由は、白骨遺体の発見までに1年を要し、死因特定の困難さと夫婦の「完全黙秘」にあった。

 検察審査会による「不起訴不当」議決に対して検察が考えを変えなかった背景には、有罪率「99%以上」を維持しようという成績偏重がうかがえる。加害者ばかりか、こうした検察の姿勢、さらには被告弁護団の非情な対応に、「真実を知りたい」という被害者遺族の苦悶が悲痛だ。神はいないのか。そう思わずにはいられない。

週刊朝日  2018年7月13日号