2007年5月に運営が始まった通称「赤ちゃんポスト」。乳幼児を匿名で預け入れることのできる施設だが、民間病院が始めたこの先駆的な取り組みの10年の内実を明かした本書は、子どもへの虐待のニュースが絶えない現代社会へ多くの問題を提起する。

 本書は子どもたちがどのような経過で預け入れされたのかを詳細に記す。貧困や不倫など原因は様々だが、危険な出産を一人で行い、すがるようにポストにたどり着く女性が多いことに衝撃を受けた。

 匿名での預け入れは、子どもたちが生みの親を知る権利を奪う。またその子たちはたとえ里親に養育されたとしても親権は実の親に残る。こうしたケースについて海外の取り組みを紹介している。さまざまな観点から丁寧に取材を重ねた労作で、広く読まれてほしい本だと感じた。

週刊朝日  2018年7月6日号