ゴリラ研究で名高い山極寿一・京大総長に、異色の火山学者が迫った。スポーツ、演劇、読書にのめり込んだ若き日々。アフリカでは何回も遭難し、ゴリラに頭を噛まれるなどの修羅場をくぐった。

 山極氏のテーマは「家族」「人類の社会性の起源」。ゴリラは、乳飲み子はメス、乳離れするとオスが保護する。オスが子育てを怠ると、メスは離れてしまう。父親は、母親や子どもに保護者と認められるという約束の上に成立するのだ。山極氏はそこに、人間社会の原型を見る。人間の場合、子どもに食料を与える行為が大人同士の間にも広がり、類人猿にない連帯力を持つようになった……。

 データより直観や想像力を重視し、洞察から導く読み解きは鮮やか。「森ではゴリラについていけば安全。ゴリラもゾウが嫌いだから」など小話も面白い。

週刊朝日  2018年6月1日号