米山隆一前知事の辞職にともない、24日に告示、6月10日に投開票となった新潟県知事選。かつて保守王国だった新潟は、市民と野党の協力で、2016年7月の参院選では現自由党の森ゆうこ氏を、同年10月の前回知事選では米山氏を当選させた実績を持つ。

 佐々木寛『市民政治の育てかた』(副題は「新潟が吹かせたデモクラシーの風」)は政治学者で、野党統一候補を勝利に導いた市民団体の立役者でもある著者が「勝利のメソッド」を明かした本だ。

 キッカケは15年、安保法制に対する反対運動と与党の強行採決だった。野党共闘への機運が高まるなか、同年12月、新潟では翌年の参院選に向け、70団体175名による「市民連合@新潟」が結成された。そして、(1)安保関連法の廃止、(2)立憲主義の回復、(3)個人の尊厳を擁護する政治という3公約を実現させるための候補者選びがはじまる。16年1月には各党の候補者を集めた懇談会が開かれ、森ゆうこ氏で一本化すると決まったのが4月。市民連合@新潟と森氏は政策協定を結び、6月には県内27カ所で連絡調整会議ができて選挙戦がスタートする。

 いや~、選挙は1日にしてならずなんだね。「新潟方式」は一貫して市民主導だった点に特徴がある。この経験が知事選にも生かされたわけだけど〈リベラルな政党や市民運動は、ともすれば「主張の中身が正しければ選挙でも勝てるはずだ」という確信が先に立ってしまいます。(略)しかし、これでは「なぜ勝てたのか」という経験値が蓄積されていきません〉。

 当選後も市民と議員(知事)は緊密な関係を保ち、政策をたえずチェックする。米山前知事が柏崎刈羽原発の再稼働に慎重であり続けたのも、市民との政策協定があればこそ。〈政治家に対して、市民は決して「ファン」であってはなりません〉なのだね。

 17年10月の衆院選でも6選挙区中4選挙区で野党系候補が勝った新潟県。次の県知事選では社民党系県議の池田千賀子氏が統一候補に決まっている。次もやってくれそうな予感。ガンバレ新潟!

週刊朝日  2018年6月1日号