一昨年、デビューするや快進撃を続けた藤井聡太六段の登場でかつてないほど将棋界に注目が集まっている。空前のブームを後押ししたひとりがテレビCMやバラエティー番組に大忙しの「ひふみん」こと著者だ。

 本書では升田幸三、大山康晴、中原誠、谷川浩司、羽生善治、藤井聡太など歴史に名を残す「鬼才」たちとの激闘をふり返る。対局から、彼らの将棋観、人生観を浮き彫りにする。14歳でデビューし、77歳まで現役を続けた著者だからこそ彼らの違いを論じられるのだろう。

 改めて認識させられるのが、著者自身が18歳で順位戦の最高峰A級にのぼりつめた天才棋士であったこと。天才と呼ばれながらも、先が見えないトンネルに入った時にどのように抜け出したかは天才でも棋士でなくても参考になる。

週刊朝日  2018年5月4-11日号