「四〇で酒乱、五〇で人格崩壊、六〇で死にますよ」と医者から宣告を受けた著者は39歳から20年間断酒を続ける。なぜアルコール依存症になったのか、酒をやめるとはどういうことか。依存症からの生還を抱腹絶倒のエピソードを交えながらふり返る。

 アル中時代の惨状も読みどころだが、酒を断ったことでの生活や思考の変化に驚かされる。人間関係はもちろん、聴く音楽はレゲエからジャズになり、スポーツ観戦は野球がサッカーに。小屋を自作してイグアナまで飼い出す。

 酒を断ったことで「4LDKのなかの二部屋で暮らしているような、独特の寂しさ」があると語るが、デメリットはほとんどないとも。元依存症の著者が酒飲みの自己本位の主張や甘えを次々と切り捨てるさまは痛快でありながら、酒好きには耳が痛い。

週刊朝日  2018年4月20日号