現在の東京・日本橋に幕府公認の遊郭が開設されて今年で400年。性風俗に詳しい二人の対談集である本書からは意外な「吉原」の姿や日本人の性愛観が浮かび上がってくる。

 吉原と聞けば、絢爛豪華な遊び場のイメージがあるが、後世に作られた部分が大きいという。例えば遊女が供を引き連れて歩く「花魁道中」が見られたのは江戸時代のごくわずかな時期で、行列は意外にもいたって質素なものだったとか。江戸末期には遊女大安売りの広告チラシが出されるなど価格破壊が顕著で、そこには我々が吉原から想起する格式の高さはない。

 イメージと史実のギャップを豊富な見識と大胆な推論で指摘する二人のキャッチボールは心地よい。現代の尺度で歴史を眺めてきたことの功罪を痛感させられる。

週刊朝日  2018年4月6日号