電車の中でスマホとにらめっこしている人たちは、あんなに熱心に何をやっているのだろう。

 10人のうち3人はおそらくスマホゲーム。それが本書の答えである。樋口進『スマホゲーム依存症』。書名だけでドキッとしません? 2011年度に480億円だったスマホゲーム市場は、6年で20倍に成長し、17年度は9600億円に達する見込み。スマホ人口5583万人(15~69歳の国内人口の約65%)、スマホゲーム人口2825万人(同約33%)の今日、これはもう他人事ではない。

 ゲーム依存はかつて子どもの問題だった。しかし今日、増えているのは30代、40代の「働き盛り・子育て世代」という。少年少女の頃、ファミコンやプレステに親しんだ世代が大人に成長したってことである。加えて低収入に長時間労働。趣味を持つゆとりもなく、人間関係も希薄だったら? つまり〈「高ストレス・低希望社会」において、スマホゲームは、とても手軽な現実逃避の手段〉なのだ。

 無料でスタートできるスマホゲームの敷居は低い。が、一方では数百円の課金でランダムにアイテムを取得できる「ガチャ」というシステムがあり、ここにギャンブル性が生じる。以前のゲームには「クリア」というゴールがあったが、スマホゲームはたえず更新されて終わりがなく、しかもスマホは24時間持ち歩ける。こうしてはじまる依存症への道。

 巷ではカジノをめぐる議論が活発化しているが、お手軽な分、こっちのほうがヤバイんじゃないかという気がしてきた。特に恐いのは、スマホゲーム依存は驚くほど進行が早いという指摘である。「いずれ飽きる」ということは絶対になく〈スマホゲーム依存に関しては、「様子を見る」という選択肢はありません〉。

 著者は種々の依存症の研究で知られる久里浜医療センターの院長。ガチャに関して彼はいう。〈私は依存の専門医として、この仕組みをあくどいと考えます〉

 自身や家族に心当たりがあれば、すぐに本書を読まれたし。ただの脅しじゃないことがわかります。

週刊朝日  2018年3月23日号