日本の会社員ならば突然、クビを宣告されることは稀だろうが、プロ野球の選手は常に引退と隣り合わせである。

 本書では25人の戦力外通告を受けた元プロ野球選手の人生を追う。2軍で戦力外通告に怯え続けた者もいれば、「これから」というときに通達された者もいる。阪神のエースで米国に渡った井川慶のような年俸数億円を稼いだスター選手も力が衰えればクビを言い渡される。

 興味深いのはユニフォームを脱いだ後の人生だ。飲食店で成功したり、公認会計士になったり、スポーツライターの著者も元プロ野球選手である。

 横浜ベイスターズの人気選手だった佐伯貴弘の言葉が印象的だ。「悲劇なのか、面白くするかは、自分次第」。若くして人生の転機を迫られた彼らの姿勢から学ぶものは多い。

週刊朝日  2018年2月9日号