2015年2月、川崎市の多摩川河川敷で中学1年生が少年3人にカッターナイフで43回切りつけられて殺害された。不良たちによる凶悪犯罪とも報じられたが、本書を読むと印象は一変する。

「加害者も社会的弱者だった」とすれば紋切り型になるが、関係者の誰もが家庭に居場所がないことに驚く。主犯の少年は小学校時代からいじめにあい、家庭では躾と称して鉄拳制裁や長時間の正座を科されていた。

 被害者の少年も母親が恋人と同棲を始めたことで、加害少年たちから酷い目にあっても、彼らと疑似家族のように群れ続けた。だが、寂しさを埋め合わせるだけの、家長のいない集団は暴走する。

 凶悪性に目を奪われがちだが、事件の背景にある空洞化した家族の現状を直視することを著者は突きつける。

週刊朝日  2018年1月26日号