《ながれぼしそれをながびかせることば》《あんみつにこころのゆるむままの午後》

 言葉の選び方、ひらがなの使い方、声にしたときの音の転がり。そのどれもが絶妙だ。1991年生まれの著者による俳句は、内省的でありながらも日溜まりのようなかろやかさとのびやかさがある。

 本書は第1句集の制作から完成するまでの過程を追体験するような異例の構造をもつ。目次が最後に配置されているのもそのためだろう。自生地とは、植物が自然に生えている土地のこと。つまりそれぞれの句は理想に沿って編み込まれたのではなく、本書に「自生している」と言うべきだろう。

「別の自生地に」と最後の詞書にある通り、完成をもって閉じられたこの句集は、遠い土地まで運ばれ、また新たな自生地で新たな始まりを迎えるのである。

週刊朝日  2017年12月15日号