ドイツの州の営林署で部局長まで務めたものの、行政官として森林を保護することに限界を感じた著者。フリーランスの営林者になり、樹木の驚くべき生態を綴った。

 野生の樹木は、100歳前後でも鉛筆ほどの太さで、人間程度の高さしかない。親木に光を遮られ、ゆっくりと成長するので内部の細胞がとても細かく、空気をほとんど含まない。おかげで柔軟性が高く、抵抗力も強く育つのだ。また、ヨーロッパの原生林の中は深い暗闇だ。草や低木が育たず、親木の幹ばかりが大聖堂の柱のようにそびえ立っている。だが、産業用の人工林では最高でも80年から120年で伐採が行われ、中に光が降りそそぐ。すると草や茂みで鬱蒼とした、ジャングルのような森になるのだ。

 世界的ベストセラーの生物連鎖のノンフィクション。じっくり読みたい。

週刊朝日  2017年11月10日号