会ってすぐ名前がまぎらわしいと、キョウスケはキョウコを「二号」と呼ぶ。美男の兄と角張った顔の妹。親の再婚で家族となった二人の物語。

 幼くして実母と死別した妹は継母スミレを慕うのだが、スミレは借金を抱えて失踪し、父と離婚。兄妹も離ればなれとなる。「面白みのない」自衛隊員の父、キョウコに恋するもオシの足りない男、世話焼きな警官など、下町の「けったいな人たち」が脇をなし、木皿泉の群像ドラマっぽくもある。十数年後、ワルに染まった兄と再会。反発しながらも、妹は兄が気がかりでならない。といって恋愛に陥るわけでもなく、置き去りにされた「同志」とも呼ぶべき関係を保っていく。

 1976年生まれで神戸市在住の著者のデビュー作。「文藝賞」最終選考で落選しながら、選考委員の強い推薦で出版となった。

週刊朝日  2017年11月3日号