ドキュメンタリー映画「FAKE」の監督・森達也が同時代人とともに、“平成”という時代を振り返る。対談相手はテレビプロデューサー、ジャーナリストなどさまざまだが、皆、自らの視点で時代と対峙してきた人々だ。

 オウム地下鉄サリン事件以降、テレビコメンテーターとして活躍した有田芳生は、オウム信者の映像作品を制作した森との間で、「どこにでもいるいい人」である信者たちが「組織」になると豹変するという構造に話が及ぶ。統一教会、在特会……平成という時代に注目を集めた組織の暴走過程には、いずれも似たところがあったのではないか、と。集団の勢いを「風」にたとえ、森は「時代が大きく軋むとき、この国はいつも強い風に吹かれていた」と警鐘を鳴らす。次代への教訓として受け止めたい。

週刊朝日  2017年10月20日号