書評『『息子が殺人犯になった』』スー・クレボルド著、仁木めぐみ訳 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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《ベストセラー解読 (週刊朝日)》

『息子が殺人犯になった』 スー・クレボルド著、仁木めぐみ訳

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長薗安浩書評#ベストセラー解読

惨劇の原因を探る

 1999年4月20日、米国のコロンバイン高校で銃乱射事件が起きた。犯人のエリック・ハリスとディラン・クレボルドは13人を殺害し、24人を負傷させて自殺した。2人は同校の4年生だった。

 ディランの母、スー・クレボルドの人生はこの日を境に一変する。郊外に暮らす善良な母親は、モンスターを育てた愚母と見なされ、地元だけでなく国内外から非難の的となった。『息子が殺人犯になった』には、それまでの価値観を全否定された彼女がいかに嘆き悲しみ、加害責任を受けとめつつ惨劇の原因を追求し、そして自分を取りもどしていったか、克明に書かれている。書いたのは、事件から16年たってからだった。

 スーは文字どおりの良妻賢母であり、夫だけでなく息子たちとも積極的にコミュニケーションをとりながら愛情豊かに育てた。ディランも近所の人々に可愛がられる少年だったが、死亡後の調査で、うつ病を患っていたことがわかる。原因は、スクールカーストと呼ばれる学校でのいじめのようだった。本人が残していたメモ等によれば、病は暴力衝動や自殺願望にまで進行していた。

 しかし、スーはその事実を見抜けなかった。ディランはいつもと変わらない態度で家族に対し、巧みに嘘をついていたのだ。彼女が事件後に初めて見た映像には、自殺を前提にした凶行計画に興奮する野蛮な息子が映っていた。

 この本には、これを読まなければ知り得ない、親にとっては不都合な真実が書かれている。それらは、スーが命がけで学んだ教訓でもある。彼女は現在、贖罪の思いを胸に、自殺防止の活動に奔走している。

週刊朝日  2017年10月20日号


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