「アメリカ桂冠詩人」の称号を与えられた著者による散文集。収められている47篇のほとんどが1ページに満たない短い作品だ。だが、ある夫婦の会話やイメージの描写、著者自身の独白のような文章など、一つひとつに短編小説のような内容が凝縮されている。

 少しずつ行ったり来たりしながら読み進めると、その時々で良いと感じる部分が異なってくる。まるで読み手の状態に合わせて形を変えるかのようだ。人生を通してそばに置いたら、どれだけの読みができるのだろう。

 2014年に80歳で亡くなった著者の最後の作品集。タイトルの「ほとんど見えない」は、言い換えれば「わずかに見える」ということ。人生の最期に、わずかに見えたものとは。本書とともに歳を重ね、その景色を見てみたい。

週刊朝日  2017年9月22日号