なぜ、スナックは潰れないのか。うまい飯があるわけでも、絶世の美女がいるわけでもない。知っているようで実は全く知らないスナックを日本でおそらく初めて学術的に論じた一冊だ。

 スナックごときと甘く見てはいけない。著者には有名大学の教授陣が並ぶ。法学、政治学、行政学などの専門家が多角的に考察する。例えば、統計一つとっても興味深い。古くさい業態に見えるスナックだがタウンページの新規登録軒数は年間で5千軒以上あり、居酒屋、美容院、不動産取引に次ぐ水準。スナックの数が刑法犯認知件数に与える影響を本格的な統計手法で分析までしている。本書を読むと寂れた町こそスナックの役割が大きいことがわかる。地域共同体の最後の砦であるスナックに地方創生のヒントも隠れているのかもしれない。

週刊朝日  2017年8月11日号